文書作成日:2025/04/22
賃金の支払いにあたっては、法令により様々なルールが定められており、それに沿った支払いが求められます。そこで今回は、割増賃金を計算するときに基礎となる賃金と、最低賃金の対象となる賃金の範囲について確認していきましょう。
[1]割増賃金
割増賃金の基礎となる賃金から除外できるものとして、以下の7つが定められています。割増賃金を計算するにあたっては、この除外賃金以外の賃金を基礎となる賃金として含める必要があります。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
また、1〜5については、手当の名称ではなく、その内容によって割増賃金の基礎となる賃金から除外できるかを判断します。判断にあたっては厚生労働省が示している具体的な範囲を参考にするとよいでしょう。例えば住宅手当の場合、「住宅に要する費用に応じて算定される手当」は除外できるとし、除外できない例も含め、以下の具体例が示されています。
【除外できる例】
住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給するもので、例えば、賃貸住宅居住者には家賃の一定割合、持家居住者にはローン月額の一定割合を支給する場合。
【除外できない例】
住宅の形態ごとに一律で支給するもので、例えば賃貸住宅居住者には2万円、持家居住者には1万円を支給する場合。
[2]最低賃金
最低賃金の対象となる賃金については、毎月支払われる基本的な賃金とされており、具体的には実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(所定外割増賃金など)
- 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精勤手当、通勤手当および家族手当
[3]間違えやすい手当
間違えやすい手当の一つとして、精皆勤手当があります。精皆勤手当は、割増賃金計算においては対象となりますが、最低賃金のチェックにおいては除外することになります。
割増賃金の計算方法を誤っていた、最低賃金を下回っていたということがないように、改めて各手当の取り扱いを確認し、問題があれば早急に是正しましょう。
■参考リンク
厚生労働省「割増賃金を計算する際の基礎とは?」
厚生労働省「対象となる賃金は?」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
- 2025年4月より短縮された雇用保険の基本手当を受給できるまでの給付制限期間2025/04/15
- 支給対象者の範囲や助成額が大幅変更となるキャリアアップ助成金2025/04/08
- 2025年度の雇用保険料率と賃金の考え方2025/04/01
- 4月に創設される育児時短就業給付金2025/03/25
- 3月分以降の協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率2025/03/18
- 3歳未満の子を養育する従業員が利用できる年金額計算の特例2025/03/11
- 36協定を締結する際の注意点2025/03/04
- 4月から始まる出生後休業支援給付金2025/02/25
- 民間企業の障害者実雇用率は過去最高の2.41%に上昇2025/02/18
- ストレスチェックの概要と活用2025/02/11
- 企業の年間休日日数の平均は過去最高の112.1日に2025/02/04
- 65歳以上定年企業は全体の32.6%2025/01/28
- 2024年12月より拡充された両立支援等助成金2025/01/21
- 社会保険の2つの年収の壁2025/01/14
- 2025年1月20日から始まる退職者のマイナポータルに離職票を送付するサービス2025/01/07
- 今後数年のうちに施行される人事労務関連の法令改正2024/12/31
- 2025年4月1日から支給率が低下する高年齢雇用継続給付2024/12/24
- 健康保険 資格確認書と資格情報のお知らせの再交付手続き2024/12/17
- 長時間労働者への実施が求められる医師の面接指導2024/12/10
- 36協定の限度時間を超えて時間外労働をさせる際の注意点2024/12/03
- 次世代法における一般事業主行動計画の策定等と改正2024/11/26
- 改めて確認したい労働時間の取り扱い2024/11/19
- 12月2日から変わる社会保険の資格取得手続き2024/11/12
- 自転車の危険運転に対する罰則の創設とその対応2024/11/05
- 今年も11月に実施される過重労働解消キャンペーン2024/10/29
- 2024年10月より支給要件が見直しとなった特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)2024/10/22
- 厚生労働省調査からみる男女別の離職理由2024/10/15
- 連続する勤務や休憩時間に関するよくある質問2024/10/08
- 協会けんぽの被扶養者資格の再確認2024/10/01
- 30.1%まで上昇した男性の育児休業取得率2024/09/24
- 最大84円の引上げとなった2024年度の地域別最低賃金2024/09/17
- 企業に求められる過労死等防止のための対策2024/09/10
- 2023年度の労基署監督指導における賃金不払事案件数は21,349件2024/09/03
- 無用な解雇トラブルを防止するために知っておきたい解雇予告の注意点2024/08/27
- 厚労省審議会から示された最低賃金額改定「全国一律50円」が目安2024/08/20
- 電子申請が義務となる労働安全衛生関係の手続き2024/08/13
- 引き続きトップとなった「いじめ・嫌がらせ」の相談件数2024/08/06
- 2025年4月から厳格化される育児休業給付の延長手続き2024/07/30
- 増加する精神障害の労災支給決定件数 求められるハラスメント対策2024/07/23
- 来年4月に創設される「共働き・共育て」のための給付金2024/07/16
- 重要となる職場の熱中症予防対策2024/07/09
- 3年連続増加となった休業4日以上の死傷者数2024/07/02
- 特別休暇を設ける際のポイントと注目を浴びる孫休暇2024/06/25
- 今国会で改正された育児・介護休業法の概要2024/06/18
- 今国会で改正された雇用保険法の注目ポイント2024/06/11
- 賃上げに取り組む企業への公的支援2024/06/04
- 労災保険特別加入者の給付基礎日額の変更2024/05/28
- 在宅勤務手当と割増賃金の算定基礎等の整理2024/05/21
- 注意が必要な36協定の「1ヶ月の時間数」の考え方2024/05/14
- 障害者雇用の現状と障害者を雇用する際の課題・配慮事項2024/05/07
- 企業の不妊治療への支援制度と助成金制度2024/04/30